ここでは短鎖脂肪酸の効果効能や腸内フローラ改善効果について述べています。
短鎖脂肪酸とは、主に食物繊維や難消化性の糖質の発酵で生じてくる、炭素の数が7個以下の脂質のことです(「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」「イソ酪酸」「乳酸」「コハク酸」)。
デンプンやオリゴ糖、食物繊維といった質の良い炭水化物を適量摂り入れると、腸内の微生物である善玉菌が働き、有機物を分解している時に腸内で「発酵」という現象が起こってきます。
そしてこの時に「短鎖脂肪酸(単鎖脂肪酸)」が作り出されますが、この短鎖脂肪酸は免疫力の向上や腸内フローラを良好に保つために必要不可欠です。
また腸内細菌が生み出す短鎖脂肪酸には、炎症を防いでアレルギー症状を抑える効果や、大腸がんを予防する効果、インクレチンというホルモンを分泌することで、インシュリンの分泌を促すことから、糖尿病や肥満を改善する働きなどがあるということが、様々な研究で分かってきています。
脂質は炭素数によって「長鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」「短鎖脂肪酸」に分類されますが、炭素数が最も少ない「短鎖脂肪酸」は、炭素の鎖の連結が短いため最も分解されやすく、すぐにエネルギー源として利用されやすいと言われています。しかも体脂肪として蓄積されることがありません。
その短鎖脂肪酸(SCFA、Short-chain fatty acid)の働きには以下のようなものがあります。
(藤田紘一郎『腸内細菌が家出する日』より抜粋)
酢酸
脂肪合成材料、抗菌活性、生合成素材、エネルギー源、血清コレステロールの上昇、酸素の摂取機能を高める、結腸の血流促進、カルシウムの吸収促進
プロピオン酸
肝臓における糖新生の材料、抗菌活性、糖新生の促進、血清コレステロールの低下、カルシウムの吸収促進
酪酸
大腸の主要部分の栄養素、抗菌活性、大腸粘膜のエネルギー源、抗がん性、がん遺伝子の抑制、細胞分化、正常細胞の増殖促進、HIV抗原の顕在化、アポトーシス(がん細胞の自死作用の促進)、ヘモグロビンの合成促進
(参考 鶴見隆史『酵素の謎―なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』)
こちらは管理人も愛用している短鎖脂肪酸が豊富な乳酸菌発酵エキス
さらに、短鎖脂肪酸に関して、医師のデイビッド・パールマター氏が『「腸の力」であなたは変わる』のなかで以下のように述べています。
短鎖脂肪酸とは、私たちが食べた食物繊維を腸内細菌が分解するときにつくる代謝産物だ。
腸内細菌がつくる主要な脂肪酸は三つ。酢酸、プロピオン酸、酪酸であり、排せつされるか結腸に吸収され、体の細胞のエネルギー源として使われる。
酪酸は結腸の内側をおおう細胞にとってもっとも重要な燃料であり、発がん抑制効果、抗炎症効果もある。
これらの脂肪酸の割合は腸内細菌の多様性や、食事のあり方に左右される。
(デイヴィッド・パールマター 『「腸の力」であなたは変わる』 白澤卓二 訳 p196)
このように短鎖脂肪酸には腸の炎症を抑制する効果もあるため、水溶性の食物繊維を普段から多く摂り、腸内フローラを改善することは、食物アレルギーや花粉症、アトピーといったアレルギー症状をはじめとして、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や過敏性腸症候群の緩和にもつながってくると考えられます。
特に短鎖脂肪酸のうちの酪酸とプロピオン酸は、花粉症をはじめとしたアレルギー症状を改善するための鍵である「制御性T細胞(Tレグ)」の生成に関わっているとされています。
また、この短鎖脂肪酸はうつの症状を緩和する効果も期待できるようです。例えば、医学博士の内藤裕二氏はメンタル面に対する短鎖脂肪酸の効果について、以下のように述べています。
有用菌によって産生される短鎖脂肪酸の中でも、特に酪酸には、抗うつ作用や認知機能改善作用があるようで、盛んに研究されているようです。こういった基礎研究は、消化管環境を改善し、有用菌を増加させるライフスタイルが、ストレスに強い、うつになりにくい、認知機能を維持する機能につながる可能性を示すものであり、大変興味深い点です。
(内藤裕二『消化管は泣いています』p179)
このように、短鎖脂肪酸は、うつの症状の改善にも効果を発揮することも期待されています。
また、酵素栄養学の第一人者として知られている鶴見隆史氏は 『酵素の謎―なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』のなかで、短鎖脂肪酸の95%は「大腸粘膜から吸収され、全ての消化管と全身の臓器の粘膜上皮細胞の形成と増殖を担い、粘膜を分泌させる働きをして」います。
さらに「胃液も腸液も膵液も胆汁もすべて短鎖脂肪酸が作っており、大腸粘膜などは100パーセント、短鎖脂肪酸をエネルギー源として」いると述べています。
ちなみに、この短鎖脂肪酸が大腸のエネルギー源になることで、粘膜を分泌するという性質は、腸壁に穴が開き、体内に有害物質が漏れ出してしまう「リーキーガット症候群」を防ぐ役割もあるとされています。
それに加え、短鎖脂肪酸は細胞内のミトコンドリアに働いてエネルギーの活性化を促したり、腸のpHを下げて殺菌力を高めたりもしているそうです。
この短鎖脂肪酸は最初にも述べた通り、食物繊維などの適量の炭水化物が腸内で発酵することによって生成されます。
そのため、極端な糖質制限などを行うと、短鎖脂肪酸が作られず、免疫力の低下をはじめとして様々な問題を引き起こす原因になってしまいます。
また、糖質を制限しすぎると腸内で発酵自体が起きなくなり、代わりにたんぱく質の摂り過ぎによる「腐敗」や脂質の摂り過ぎで生じる「酸敗」ばかりが起こってきてしまい、窒素残留物などが生じて腸内環境を悪化させる大きな原因になってしまいます。
したがって、腸内環境の悪化を防ぐためにも、ダイエット効果などを期待して、炭水化物に分類される食物繊維をほとんど摂らないような、極端な糖質制限は行わないほうが賢明です。
一方、東京農工大学の木村郁夫氏の研究で、腸内細菌が食物繊維を分解することで生じる短鎖脂肪酸には、余分なエネルギーが肥満細胞に吸収され、脂肪が蓄積されていくのを防ぐ働きがあることが分かったそうです。
したがって、肥満を予防したり、ダイエットを成功させたりすためには、無理な糖質制限のしすぎで腸内環境を悪化させるよりも、短鎖脂肪酸がたくさん生み出されるよう、食物繊維を継続的に摂ることで腸内細菌を増やしていき、腸内フローラを改善していくことが重要になってきます。
特にグァー豆酵素分解物などの水溶性の食物繊維は、腸内細菌のエサになりやすいため、短鎖脂肪酸の生成に役立つといわれています(参考 内藤裕二『人生を変える賢い腸のつくり方』)。
それに加えて、短鎖脂肪酸は特定の腸内細菌ではなく、バクテロイデス門をはじめとした、野菜などに含まれた食物繊維を好む様々な腸内細菌たちの連携によって生み出されるとされています。
ちなみに水溶性の食物繊維は上行結腸付近で、不溶性の食物繊維はS状結腸付近で腸内細菌によって分解されることにより、短鎖脂肪酸が生み出されます。
さらに近年は「善玉元気」といった、短鎖脂肪酸が乳酸菌発酵エキスとして最初から含まれた良質なサプリメントも販売されていますので、そのようなサプリメントを利用することも、腸内フローラを良好に保つための手段の一つです。
この【善玉元気】 は、最初から発酵によって短鎖脂肪酸が含まれているだけではなく、腸内フローラの改善によって短鎖脂肪酸を生成するのに必要な水溶性食物繊維なども配合されています。
そのため、善玉元気は腸内フローラが短鎖脂肪酸を生み出すのをサポートしてくれます。
管理人も日頃からこの善玉元気を愛用し、その効果を実感しています。