腸と心の関係を示している症候群として「過敏性腸症候群(IBS)」があります。過敏性腸症候群とは一般的に、不安やストレスを感じた際に、腹部の辺りに強い不快感をおぼえると共に、それが下痢や便秘のかたちで現れる症状のことです。
この過敏性腸症候群は、血液検査や内視鏡検査で異常が見つかりにくいこと、またストレスで悪化することから、心身症のひとつであるとされています。過敏性腸症候群(IBS)に関して、医学博士の福土審氏は以下のように述べています。
IBSでは、腹痛と便通異常(下痢や便秘)が関連し合いながら慢性に持続するが、通常の臨床検査では愁訴の原因となる器質的疾患が認められず、心理社会的なストレスを受けると発症したり悪化したりする。また、IBSの症状を持つ人は不安やうつになりやすい。IBSの症状は腸の問題、一方、ストレス、不安、うつは脳の問題である。このような意味で脳腸相関がIBSでは重要な役割を果たしている。(福土審『内臓感覚 脳と腸の不思議な関係』 p10)
IBSの症状を発生・憎悪させる一番大きな要因は心理社会的ストレスである。健康な人でも、心理社会的ストレスが負荷されると、腹痛が起こったり、便意を催したり、あるいは便が出にくくなったりする。しかし、その程度はごく軽度である。IBSと診断される人は、この現象がはっきりとあらわれる。そして、多くの場合、心理社会的ストレスがのしかかっているということに気づいていないか、気づいていても、それを言葉に出そうとしない人が多い。(同 p93)
過敏性腸症候群は長引くことで生活の質をいちじるしく低下させてしまうことが考えられますので、腹部の不快感がいつまで経っても治まらない場合は、重度の症状が現れる前に所定の機関で診察を受けるなど、何らかの対処が必要になってきます。
また腸内フローラを改善することによって過敏性腸症候群を予防していくことについてはこちらをご覧ください。