ここでは『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』を、腸をより深く知るための書籍として紹介しています。
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』(アランナ・コリン 著 矢野真千子 訳 河出書房新社)は、私たち「ヒト」を取り巻く微生物群に関する話題が網羅された一冊です。
特に「マイクロバイオーム」という、「ヒト体内の常在菌とそれが発現する遺伝子群」は、私たちの健康や病気の問題と深く関わっていることが、近年、急速に分かってきていますが、本書『あなたの体は9割が細菌』の著者であるアランナ・コリン氏は、サイエンスライターとしてのニュートラルな立場から、腸内フローラをはじめとした微生物相とヒトとの関わりの実相について、克明に迫っています。
この『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』の目次は、
となっていますが、本書に書かれている内容で、マイクロバイオームと関わりが深く、特に印象的だと感じられたのは、
といった話題です。
腸内細菌叢だけではなく、マイクロバイオーム(微生物とヒトとの相互の関わり)が、21世紀において大きな問題となっている、うつ、自閉症など心の病気の多くや肥満などと深く関係していることは確かです。
そしてその背景には、抗生物質の乱用や過度の除菌、安易な選択としての帝王切開なども関わってくると思われますが、本書『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』では、そのような問題についての見解が客観的に述べられています。
ちなみに、生物学を専攻していたアランナ・コリン氏は、マレーシアのクラウ野生生物保護地区で過ごしていた際に、ダニによる熱帯病に感染してしまったといいます。そして、ダニ媒介型の感染症は、抗生物質によって抑えられたものの、今度は、皮膚の発疹や胃腸が弱くなることなど、別の不具合に苦しめられるようになったそうなのです。そして、
あの一連の抗生物質は、私を苦しめていた細菌を全滅させただけでなく、もともと体のなかにいた細菌まで絶滅させてしまったのではないだろうか。私は自分の体が微生物の棲めない荒れ地になってしまったように感じ、かつて私の体を棲み処としていた一〇〇兆個の友好的な微生物がどれだけ重要な存在であったかを、このときはじめて意識した。
というのです。
私は人体に棲む微生物のことを調べるうちに、自分自身を独立した存在と考えるのをやめ、マイクロバイオータの容器だと考えるようになった。私自身と私のマイクロバイオータはまとめて一つの「チーム」なのだ。どんな人間関係もギブ・アンド・テイクで成り立っている。それと同じように、私は微生物に対する提供者であり保護者であり、微生物はそのお返しに私に栄養を与えてくれる。私は私のマイクロバイオータが喜ぶような食事の摂り方を考えるようになった。
(『あなたの体は9割が細菌』p137~138)