ここではリーキーガット症候群とアレルギーの関係について述べています。
多様な腸内細菌の集まりである腸内フローラや腸内環境は、アレルギーの発症の仕組みと深く関わっていますが、「リーキーガット症候群(シンドローム)」もアレルギーの発症と関係しています。
この「リーキー・ガット症候群」(腸管壁浸漏症候群)とは、「腸もれ」とも呼ばれており、十分に分解されていないために本来は大きすぎて小腸の腸絨毛で吸収されないはずの栄養素の分子が、血液中に取り込まれてしまうというものです。
ちなみにこのリーキー・ガット症候群(LGS)が起きてくる原因は、小腸の腸絨毛が炎症を起こすことにより、テニスラケットのガットが緩んで広がってしまった部位が出来てしまうことにあります。
また腸もれであるリーキー・ガット症候群が起きてしまうと、小腸からはアミノ酸レベルにまで分解されなかった未消化のタンパク質や細菌、ウイルスなどが体内に侵入しやすくなり、免疫システムは それを異物と見なし、抗体で包み込んでしまうのです。
このように免疫システムが体を守ろうとする行為によって起こるのがアレルギーなのです。
アレルギーによって引き起こされる疾患は、喘息や鼻炎、花粉症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などだとされています。
また酵素栄養学の第一人者である鶴見隆史氏によれば、「膠原病、クローン病、多くの神経疾患、潰瘍性大腸炎といった難病」も、このリーキーガット症候群が影響していると言われているそうなのです。
さらに、糖尿病や心臓病、肝障害、脳卒中や肥満といった生活習慣病の多くも、リーキーガット症候群が影響しているという報告もあるとされています。
そのほか、リーキーガット症候群になると、大事なビタミンとミネラルの吸収も阻害されてしまうとされています。
リーキーガット症候群の発症は、腸内フローラが十分に育っていなかったり、腸内細菌の数が減少することで、腸管のバリア機能が低下したりすることと深く関係しています。
そのため、リーキーガット症候群を防ぐためには、日頃から腸内細菌の数が増えるよう食生活を改善し、腸管のバリア機能を高めて、異物が小腸から体内に侵入しないよう心がける必要があります。
ある種の乳酸菌にはバリア機能を高める働きがあるとされています。また水溶性の食物繊維をエサとする腸内細菌が「発酵」と呼ばれる現象によって生成する「短鎖脂肪酸」にも腸管のバリア機能を高める働きがあるとされています。
そのほか、めかぶなどのネバネバした食材や、納豆をはじめとした日本の発酵食を普段から摂るようにすることも、リーキーガット症候群を改善するためには大切です。
したがって、普段から乳酸菌や食物繊維、発酵食を多めに摂ることで、腸内フローラを改善していくことが、リーキーガット症候群を防ぐために重要になってきます。
それ以外にも、オメガ3脂肪酸やグルタミン、消化酵素といった栄養成分は、リーキーガット症候群の症状に対して有効に働くとされています。
また、リーキーガット症候群を引き起こす原因になるものとしては、医師の﨑谷博征氏によって以下が挙げられていますので、リーキーガット症候群を防ぐためにはこれらのものをなるべく摂らないようにすることが大切です。
(﨑谷博征『「原始人食」が病気を治す』より)
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ちなみにこの「リーキーガット症候群」に関して神経科医のデイビッド・パールマター氏は以下のように述べていますので、もしよろしければ参考にしてみてください。
体が食べ物に対して過剰に反応すると、炎症のメッセンジャー分子が送り出され、その食べ物の粒子を敵として分類する。これによって免疫系は、敵を一掃するために、炎症性化学物質、とりわけナチュラルキラー細胞を放出し続ける。この過程で細胞がダメージを受けることは少なくなく、胃腸の壁は免疫反応が十分に働かない「リーキーガット(腸管からの漏れ)」と呼ばれる異常を起こす。いったんこうなると、将来、さらに食べ物に対する過敏症にかかりやすくなる。そして炎症の猛攻撃を受け、自己免疫疾患を進行させるリスクにも見舞われる。
炎症は、多くの脳疾患を引き起こすもとであり、炎症自体は免疫系が人の体内の物質に反応すると始まる。免疫系の抗体がタンパク質、あるいはアレルギーを引き起こす抗原と接触すると、サイトカインという損傷を与える化学物質が大量に放出される。
(デイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』 白澤卓二訳 p81)
体が腸から栄養分を吸収するために使う経路は二つある。経細胞経路と傍細胞経路という。
経細胞経路を使って栄養分は上皮細胞同士のあいだを通る。この細胞同士の結合は 「密着結合」と呼ばれ、非常に複雑で厳密に管理されている。
「 リーキー・ガット(腸管からの漏れ)」 と呼ばれる腸内の透過性の問題を聞いたことがあるかもしれない。それは、この一〇~一五A(オングストローム)の長さの、密着結合の能力の問題のことを指す(オングストロームとは非常に小さい単位であり、典型的なウイルスや細菌よりもはるかに小さい)。
もし、このゲートキーパー機能(出入り口の見張り)が正常に作動していなければ、「通していいもの(栄養)」と「阻止すべきもの(危険な可能性のあるもの)」を正しく監視できず、漏れてはいけないものが漏れだしてしまう。
これまで述べたように、炎症が増えることで体は浸食されやすくなり、さまざまな病気を引き起こしやすくなることがわかっている。
関節炎リウマチ、食物アレルギー、ぜん息、湿疹、セリアック病、炎症性腸疾患、HIV、嚢胞性繊維症、糖尿病、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、などだ。
このゲートキーパーがゆるくなったほうが望ましいこともある。
特定の腸感染症は、コレラ菌に起因するコレラのように、腸が逆方向に漏れやすくなっていることが特徴であり、血流から腸内に液体が入りやすくなっている。
これは細菌や毒素を希釈するのを助けるためだろうと考えられる。
最終的に、腸感染症で起こる下痢によって、細菌を体から排出するのである。
( デイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「腸の力」であなたは変わる』 白澤卓二訳 p78~79)
また、氏は腸に炎症が起きることによって、毒性の化学物質が血液内に流れ込むことは、脳の炎症も引き起こし、うつ病をはじめとした脳の疾患を引き起こす原因にもなることを指摘しています。