ここでは大腸がんと腸内フローラの関係について述べています。
以前は、大腸がんになる人はわずかでしたが、最近ではがんの死因として、女性では1位、男性では3位になっています(2016年)。
このように大腸がんを患う方が増えている原因については、まだ解明されていません。しかし、日本で大腸がん患者が急増している理由として、欧米型の食習慣による腸内フローラの変化を挙げている研究者もいます。
このことに関して、たとえば理化学研究所の辨野義己氏は、
私たちの研究では、大腸がん患者の腸内フローラでは、ある種のビフィズス菌が減っていることがわかりました。ただ、なぜビフィズス菌が減るのかはわかっていません。
大腸がんが発生するかどうかは、食習慣などが大きく影響します。ある細菌が大腸がんになりやすい環境を整えたのか、それとも大腸がんになった結果その細菌が増えたのかは、よくわからないわけです。(辨野義己『腸を整えれば病気にならない』p82)
と述べています。
また、「大腸がんのなりやすさは、食習慣の影響が大きいのが特徴です」としたうえで、「加工肉や赤身肉の大量摂取でがんが増えることは、かなり以前から、科学的にほぼ確かな事実です」としています。
そして動物性脂肪をたくさん食べると大腸がんになりやすい理由として、「腸内フローラが作り出す発がん物質や発がん促進物質」を挙げています。
肉を食べ過ぎて胆汁が多く出ると、小腸での吸収が間に合わず、胆汁酸が大腸にまでやってきて、腸内フローラがその胆汁酸を二次胆汁酸に変化させてしまうことが問題のようです。「二次胆汁酸の中には、デオキシコール酸やリトコール酸という物質があり、これらは発がんを促進する」ことが知られているといいます。
さらに辨野氏は、肉食中心で野菜などに含まれる食物繊維が不足してしまうと、便秘がちになり、腸粘膜や有害物質に長時間さらされてしまうことも、肉食によって大腸がんにつながる要因だとしています。
そのほか、たんぱく質の摂りすぎが原因で起こる「腐敗」と呼ばれる現象も、大腸がんの大きな原因だと考えられます。
この「腐敗」とは、たんぱく質が分解する際に発生するアミン、インドール、スカトール、フェノールなどの有害物質が食べ物を腐敗させ、腸内環境を悪化させてしまうことです。
そして、腸内を腐敗させるこれらの有害物質は、さらに強烈な発がん物質であるニトロソアミンを作り出すと言われています。
そのため、大腸がん予防のために大切なのは、肉をまったく食べないことではなく、肉食ばかりの偏った食生活を送らないようにし、野菜などもしっかりと摂るバランスの良い食生活を心がけて、腸内フローラを整えることだと思われます。