ここでは大腸がんの予防には腸内フローラの改善が効果的であるということについて述べています。
大腸がんを腸内フローラの改善によって予防していくには、肉食中心の食事を避け、野菜などに多く含まれる食物繊維をきちんと摂るようにすることが大切だと思われます。
近年、大腸がんを患う方が増えている方が急増していますが、その原因については、まだ解明されていません。しかし、肉食中心の欧米型の食事に移行していったことで、腸内フローラが変化したことは、大腸がん発症の要因のひとつとして十分考えられます。
たとえば理化学研究所の辨野義己氏は、
大腸がんが発生するかどうかは、食習慣などが大きく影響します。ある細菌が大腸がんになりやすい環境を整えたのか、それとも大腸がんになった結果その細菌が増えたのかは、よくわからないわけです。(辨野義己『腸を整えれば病気にならない』p82)
と述べています。
また、「大腸がんのなりやすさは、食習慣の影響が大きいのが特徴です」としたうえで、「加工肉や赤身肉の大量摂取でがんが増えることは、かなり以前から、科学的にほぼ確かな事実です」としています。
肉を食べ過ぎて胆汁が多く出ると、小腸での吸収が間に合わず、胆汁酸が大腸にまでやってきて、腸内フローラがその胆汁酸を二次胆汁酸に変化させてしまうことが問題のようです。「二次胆汁酸の中には、デオキシコール酸やリトコール酸という物質があり、これらは発がんを促進する」ことが知られているといいます。
それに加えて、辨野氏は、肉食中心で野菜などに含まれる食物繊維が不足してしまうと、便秘がちになり、腸粘膜や有害物質に長時間さらされてしまうことも、肉食によって大腸がんにつながる要因だとしています。
したがって、普段から腸内フローラを良好に保ち、便秘を解消していくことが、大腸がん予防につながることは十分考えられます。
また、松生クリニック院長である松生恒夫氏も、赤身肉が大腸がんのリスクになる理由として、
「肉には、脂質、特にコレステロール値を上昇させる飽和脂肪酸が多いため、多く摂取すると肥満やメタボリックシンドロームなどを引き起こす点です。肥満は大腸がんの危険因子の一つに数えられているのです」
ということを挙げています(参考 松生恒夫『腸に悪い14の習慣』)。
さらに、赤身肉に含まれる鉄分が活性酸素を多く発生させることも、大腸がんの発生リスクを高めることにつながるとしています。
ここまで赤身肉などの肉食中心の食事は、大腸がんの発症リスクを高めるということについて述べてきましたが、一方、大腸がんの予防に役立つのは食物繊維だと思われます。
食物繊維は腸内フローラを改善していくために必要不可欠だと思われますが、この食物繊維には、腸内環境をキレイにしたり、腸内細菌のバランスを整えたりする働きがあります。
また、特に水溶性の食物繊維を多く摂ると、腸内細菌が発酵によって短鎖脂肪酸を作り出してくれますが、この短鎖脂肪酸にも、がんを予防する働きがあるとされています。
実際、医学博士の内藤裕二氏によると、ヨーロッパで行われた研究では、「食物繊維の摂取量が一日一〇g未満の人の場合、食物繊維の摂取量を増加させることによって、大腸がんのリスクが低下するとの結果が出た」といいます(参考 内藤裕二『人生を変える賢い腸のつくり方)。
一日一〇g以上の食物繊維を摂取している人の場合は、大腸がんの予防効果は認められなかったようですが、普段から肉食中心で食物繊維が不足しがちな方は、食物繊維の摂取量を増やすことが大腸がんの予防につながることは十分考えられるのです。
以上ここまで、大腸がんの予防には腸内フローラの改善が効果的であるということについて述べてきましたが、肉食を完全に止めるのではなく、肉ばかりの食事を避け、野菜や果物、海藻類などから食物繊維をきちんと摂取して、腸内フローラを改善し、腸内環境を良好に保つようにすることが、大腸がん予防のためには大切だと思われます。