ここでは小腸の病気「SIBO」(小腸内細菌増殖症)と腸内環境・腸内フローラの関係について述べています。
「SIBO」(小腸内細菌増殖症 Small Intestinal Bacterial Overgrowth)とは、本来、大腸だけに生息しているはずの細菌(バクテリア)が小腸にも増殖してしまう病気のことをいいます。
正常な小腸の腸内細菌の数は、1万個程度ですが、SIBOにおいては、およそ10倍も増えてしまうというのです。
もし小腸の腸内細菌が異常に増殖してしまえば、食べ物の栄養素がきちんと吸収されなかったり、免疫力の低下などの問題も生じてきてしまいます。
そのため、一般的に腸内環境や腸内フローラを改善するためには、食物繊維やオリゴ糖などを摂取することによって、腸内の大腸の善玉菌を増やすことが大切だとされていますが、「SIBO」(小腸内細菌増殖症)の場合には、腸内細菌を増やす炭水化物を摂ることは、逆効果になるとされています。
そして、この「SIBO」(シボ)にかかってしまうと、腹痛、おなら、頑固な便秘や下痢、ゴロゴロするお腹の違和感、お腹の張りなどに悩まされてしまうといいます。
またSIBOは、急な腹痛による下痢などに悩まされる過敏性腸症候群の症状や、クローン病、セリアック病などとも関係しているといわれています。
さらに、SIBOの患者は、腸の粘膜の透過性の亢進が起こってしまうことにより、細菌のつくった毒素や、本来は入り込むことのない未消化の栄養物まで体内に通してしまうリーキーガット症候群の状態になっているといいます。
では、なぜ小腸の病気である「SIBO」(小腸内細菌増殖症)は引き起こされてしまうのでしょうか?
SIBOを引き起こす原因として、医学博士の江田証氏は、『小腸を強くすれば病気にならない 今、日本人に忍び寄る「SIBO」から身を守れ!』(インプレス)のなかで以下を挙げています。
①小腸の消化管運動の障害
②大きなストレスや間食などの生活習慣が、小腸の動きを悪くする
③抗生物質の乱用
④胃薬による胃酸過少
⑤免疫力の低下
⑥炭水化物の消化不良、食べすぎ
⑦重金属が体に蓄積
⑧急性胃腸炎などのあとに発生する
⑨大腸のバウヒン弁に障害がある
⑩胆のう除去など機能的な問題
(江田証『小腸を強くすれば病気にならない』p106)
では、SIBOを予防したり、改善したりするには、どのようなことが大切になってくるのでしょうか?
まず、食事においては、腸内細菌・バクテリアを過剰に増やさないように、炭水化物の摂取に気をつけることが必要になってきます。
特に「高FOODMAP」と呼ばれる食事・食品は避け、なるべく「低FOODMAP」と呼ばれる食事・食品を摂るようにすることは大切です。
「FOODMAP」とは、
といった吸収が悪い発酵性の糖質を指すとされています。(参考 江田証『小腸を強くすれば病気にならない』)
この「FOOFMAP」の考え方によれば、たとえば、穀物に関しては、白米や玄米、そばなどはOKですが、小麦や大麦、パン、パスタやうどんなどは避けた方が良い食べ物になります。
また、野菜や果物に関しては、なすや大根、にんじんやブロッコリー、バナナなどは大丈夫ですが、さつまいもや玉ねぎ、ニンニクやアスパラガス、バナナなどは避けた方が良い、とされています。
ところで、先程の江田証氏は、『小腸を強くすれば病気にならない』のなかで、SIBOを改善するために大切なこととして、以下を挙げていますので、ご紹介したいと思います。
①適度な胃酸を保つ
②胆汁の分泌を良くする(座りっぱなしをやめる。立ち食いをする。座ってばかりいると胆汁の流れが悪くなる)
③小腸の消化運動を(MMC)を良好に保つ
④大腸から小腸への逆流を防ぐ
⑤小腸内のバクテリアを飢えさせる
⑥抗生物質を使う(天然のサプリメントを使う)
⑦小腸のバクテリアにエサを与えない食事をとる(成分栄養)
⑧免疫力を高めるサポートをする
⑨SIBOマッサージ
(江田証『小腸を強くすれば病気にならない』p126~127)
ほかに、江田証氏は、SIBOの治療に必要なこととして、4つのRを挙げています。
①Remove(除去)→過剰に増えすぎた細菌を減らす
②Restore(復元) →低下してしまった小腸機能を回復する
③Replenish(補充) →小腸の細菌数を減らし悪玉菌を減らしたあとに、プロバイオティクス(善玉菌)をとる
④Recurrence prevention(再発予防) →良い腸の状態を維持し、再発を予防する
(江田証『小腸を強くすれば病気にならない』p220~221)
以上ここまで、小腸の病気「SIBO」(小腸内細菌増殖症)について述べてきましたが、オリゴ糖や食物繊維がたっぷりと含まれた一般的に腸に良いといわれている食べ物を摂ると、逆にお腹が張ってしまうという方は、もしかしたら「SIBO」が関係しているかもしれません。
日本でも患者数が増えてきている「SIBO」について詳しく書かれているのは、先程ご紹介した江田証氏の『小腸を強くすれば病気にならない 今、日本人に忍び寄る「SIBO」から身を守れ!』という本ですが、症状が深刻な場合は、自分の判断で改善しようとせず、きちんとした医療機関で医師に診察してもらうことも必要だと思われます。