腸内環境を改善するためには脂肪(脂質)の摂り方が大切になってきますが、特に大切なのは必須脂肪酸のなかのオメガ3(DHA・EPA・αリノレン酸)です。
腸内環境を改善するための脂肪の摂り方として大切なことは、まず、酸化した油など質の悪い油をなるべく摂らないようにすることです。
そもそも脂質は他の栄養素と比べると、消化されるまでに時間がかかるうえ、分解の際に大量の酵素が必要になるため、きちんと分解されて吸収されない場合、腸内に止まって「酸敗」と呼ばれる現象を引き起こす原因になってしまいます。
「酸敗」とは、脂質が腸内で酸化することによって大腸の悪玉菌が繁殖することです。そうなってしまうと、「二次胆汁酸」ができてしまい、その際に、悪玉菌が腸内のアミノ酸を引っぱてきて、大腸がんの原因にもなるとされる「窒素残留物」が作られてしまいます。
また、近年問題になっている油として、不飽和脂肪酸を固体にするために水素を添加して出来上がった、いびつな飽和脂肪酸である「トランス脂肪酸」があります。
このトランス脂肪酸はプラスチックのように腐らない油だとされ、消化に悪いだけではなく、細胞膜の働きをおかしくする可能性もあるため、出来るだけ摂らない方がよい脂肪です。
酸化した油やトランス脂肪酸などの質の悪い油は、時間の経った揚げ物やカップ麺、スナック菓子などの加工食品に多く含まれているため、腸内環境を改善するためには、普段から摂っている脂肪の質に注意を払う必要があります。
しかし、脂肪(脂質)といっても「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類され、様々な種類のものが存在しているため、肥満防止やダイエットのためにただ闇雲に避ければ良いというわけではありません。なかには「必須脂肪酸」と呼ばれる、体内では製造されないため、外から摂り入れなければならない脂肪も存在しています。
特に人間の細胞膜やホルモン、脳組織や脳細胞の一部は「リン脂質」という物質で作られているため、脂肪のなかの「必須脂肪酸」は人体を構成するうえで必要不可欠な栄養素であることを、覚えておく必要があります。
名称 | 脂肪酸の種類 | 含まれる主な食品 |
飽和脂肪酸 | 酪酸、ミリスチン酸、アラキジン酸など | バター、ココナッツオイル |
多価不飽和脂肪酸 オメガ3 |
α‐リノレン酸、DHA、EPA | 亜麻仁油、えごま油、シソ油、魚油など |
多価不飽和脂肪酸 オメガ6 |
リノール酸、アラキドン酸 | サラダ油、紅花油、ごま油、コーン油、肝油など |
一価不飽和脂肪酸 オメガ9 |
オレイン酸、パリミトレイン酸 | オリーブオイル、椿油など |
そのため脂肪の摂り方で大切なのは、まず第一に、体に必要な必須脂肪酸を正しく摂ることです。
その必須脂肪酸は「多価不飽和脂肪酸」とも呼ばれ、「オメガ3」と「オメガ6」に分類されますが、そのうちの「オメガ6」はあえて摂る必要はなく、「オメガ3(α‐リノレン酸・DHA・EPA)」をバランスを整えるように摂るようにすることが大切であるように思われます。
なぜなら近年は「オメガ6」が含まれたサラダ油や紅花油などが外食産業や家庭での調理の際に大量に使われており、(日頃からどのような食生活を送っているかによって違ってきますが)多くの方々は知らないうちにオメガ6の必須脂肪酸である「リノール酸」を必要以上に摂り過ぎている可能性があるからです。
また、リノール酸は植物油だけではなく、マヨネーズやドレッシング、カレーやシチューのルーなど多くの食品に含まれています。
もちろん、オメガ6の脂肪酸も必須脂肪酸であるため、細胞膜やホルモンをつくる働きがあることは確かですが、摂り過ぎてしまうと、善玉コレステロールの値を下げたり、アトピー性皮膚炎などアレルギー症状の原因になったりすると言われています。
そのため、近頃はリノール酸の摂り過ぎが健康に与える影響のほうが大きな問題になってきています。特に潰瘍性大腸炎やクローン病の炎症を悪化させるという指摘があります。
そのようなオメガ6の働きに対して、相反する働きをするのが「オメガ3」であるとされています。
α‐リノレン酸、DHA、EPAのオメガ3には、中性脂肪を減らしたりコレステロール値を調整したりして、血液をサラサラにする働きがあります。また、腸管免疫の健康を維持するためにも欠かせないといわれています。
それに加えて、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和するほか、脳細胞に対しても働きかけるため、判断力や記憶力など、脳の認知機能の改善にも大きな効果を発揮すると言われています。さらに近年、オメガ3には発がんの抑制する可能性があることも指摘されています。
つまり、オメガ6の摂取量に対して、バランスを取るようにして、オメガ3の必須脂肪酸もある程度摂取していかないと、動脈硬化やアレルギーなど人体に対して悪影響を与えてしまうのです。
このオメガ3必須脂肪酸のDHAやEPAは主にサバなどの青魚に含まれていると言われています。また、α‐リノレン酸は体内でDHAやEPAに変わる性質があり、亜麻仁油やえごま油、シソ油、グリーンナッツオイルなどに含まれています。
DHAやEPAを日常的に摂取するのが難しい方は、亜麻仁油をはじめとするα‐リノレン酸が多く含まれた油を、加熱せずにそのままサラダなどにかければ、不足しがちなオメガ3必須脂肪酸をある程度補うことが可能です。
また十分な量のオメガ3脂肪酸を補給したい場合は、 DHA&EPAオメガプラス のような低価格・高品質なDHAやEPAサプリメントからの摂取がおすすめです。
また、腸内環境の改善に役立つ油としては、オリーブオイルが挙げられます。このオリーブオイルに多く含まれているのは、オメガ9(一価不飽和脂肪酸)と呼ばれる「オレイン酸」です。
オメガ9は体内でも合成されるため、必ず摂らなければいけないわけではありませんが、このオレイン酸には腸内に働きかけて腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し、便秘を改善したりするほか、血中のコレステロールを調整して血管系の病気を予防したりする働きもあるため、日頃の食生活の中でオリーブオイルをうまく利用することは、腸内フローラ改善に役立ちます。
それ以外にも、蒸気や溶剤などを利用して精製されたものではない、良質のオリーブオイルには、活性酸素の働きを抑える抗酸化成分であるポリフェノールやビタミンEが多く含まれています。
特に「エキストラバージンオリーブオイル」と呼ばれるオリーブオイルには、100種類以上のポリフェノール類やビタミン類が含まれていて、活性酸素による細胞のサビつきや過酸化脂質の生成を防ぐ強い抗酸化作用があることが分かってきています。
このように、腸内環境を改善するためには、質の悪い油を避け、質の良い油を自ら選択していくことが非常に重要なのです。
参考文献
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
藤田紘一郎 『脳はバカ、腸はかしこい』 三五館
松生恒夫 『腸寿 長寿な腸になる77の習慣』 講談社
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
新谷弘実 『健康の結論―「胃腸は語る」ゴールド篇』 弘文堂
新谷弘実 『病気にならない生き方』 サンマーク出版
鶴見隆史 『「酵素」の謎 なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 祥伝社