食物繊維は腸内フローラの改善のために非常に高い効果を発揮してくれます。
実は食物繊維は以前は消化しきれない食べかす程度の評価でしたが、近年は食物繊維が腸内環境において、腸内細菌による短鎖脂肪酸の生成など、様々な良い効果をもたらすことが分かっているのです。
そのため食物繊維は腸内フローラを改善するためには必要不可欠な栄養成分だと考えられるようになり、非常に注目を浴びるようになりました。
例えばアフリカ人やメキシコ人は、食物繊維が豊富に含まれた野菜などをたくさん食べるため、便秘とは無縁で、便の排出量も多く、大腸がんなどの大腸系の疾患も少ないと言われています。
反対に、日本人の食生活においては、急激なライフスタイルの変化もあり、食物繊維が不足しがちになってきています。
特に肉類や精製された穀類、加工食品の多くには、食物繊維が含まれていないため、普段からそのような食品ばかりを摂っていると、腸内の腐敗に拍車をかけ、腸内環境を悪化させると言われています。また食物繊維の慢性的な不足は便秘の問題も引き起こしてしまいます。
ちなみに「食物繊維」とは、人の消化酵素で消化されない難消化性成分のことであり、炭水化物に分類されますが、その食物繊維の働きには以下のようなものがあります。
・食物繊維の効果・効能
①便の構成要素となり、便量を増やす
②腸の蠕動運動を活発にして、内容物を速やかに移動させる
③発がん物質、有害菌、有害物質を吸着して、便として排泄する
④消化管の働きを活発にする
⑤糖の吸収速度を遅くして、食後の血糖値の上昇を防ぐ
⑥胆汁酸を吸着して、便として排泄する
⑦コレステロールの余分な吸収を防ぐ
⑧ナトリウムの過剰摂取を防ぐ
⑨善玉菌のエサになり、腸内環境を改善する
⑩膵液や胆汁の分泌量が増え、酵素の量を多くする
⑪不溶性食物繊維キチン・キトサンは、脂肪の過剰摂取を抑制する
⑫短鎖脂肪酸のエサになる
(鶴見隆史『「酵素の謎」――なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』より抜粋)
また、食物繊維には水溶性のものと不溶性のものがあります。
水溶性の食物繊維には、イチゴなどの果物に多いペクチン、植物の種や樹皮に多い植物ガム、こんにゃくに多いグルコマンナン、めかぶや昆布といった海藻類に多いフコイダンやアルギン酸などの種類があります。
不溶性の食物繊維は主に野菜や穀類、豆類、木の実などに含まれるセルロースと呼ばれる成分を指しています。
水溶性の食物繊維の特徴としては、摂取すると腸内の水分に溶けてゲル状になる性質があるため、栄養の吸収をゆるやかにしたり、血糖値の急激な上昇やコレステロールの吸収を抑えたりすることが挙げられます。
さらに、水溶性の食物繊維は腸内細菌のエサになりやすいという性質もあります。
一方、不溶性食物繊維は、摂取すると消化されないまま大腸に届くと便のかさが増していくために、腸内の不要な残留物を外に排出しやすくするという働きがあります。つまり、不溶性の食物繊維は腸内環境をキレイにしてくれるのです。
また不溶性食物繊維はザラザラ・ボツボツしており、そのザラザラ・ボツボツの性質や胃や腸で水分を吸収すると大きく膨らむことが、腸を刺激してぜん動運動を活発にしやすいとされています。
なお、医学博士の松生恒夫氏によれば、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の割合を2:1にすると、便秘の改善に良好な結果を生むといいます。
水溶性食物繊維
作用 | 腸管内でゲル状になり、便の移動をスムーズにする |
機能 | 便を正常にする・過敏性腸症候群の症状を改善にする・有用菌の発酵の材料になり、短鎖脂肪酸を生成する |
主な食品 | 根菜、野菜、豆類、海藻、きのこ、熟した果実 |
作用 | 水分を吸収して膨らみ、便量が増加することで便通が改善する |
機能 | 便秘を解消する・有害物質を希釈し、がんの予防や血圧を下げる |
主な食品 | 穀類、野菜、豆類、甲殻類の殻、ココア、熟していない果実 |
・水溶性食物繊維を多く含んだ食品
わかめ、昆布、モズク、寒天、らっきょう、ごぼう、切り干し大根、干ししいたけ、いちじく、プルーン、インゲン豆、納豆、ココナッツファイバー、もち麦など。
・不溶性食物繊維を多く含んだ食品
ごぼう、さつまいも、プルーン、アボガド、大豆、納豆、切り干し大根、干ししいたけ、アーモンド、ココア、くるみ、落花生など。
◎水溶性食物繊維
ペクチン、グアーガム、イヌリン、グルコマンナン、βグルカン、難消化性デキストリン、アガロース、カラギーナン、キトサンなど
◎不溶性食物繊維
セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン・キトサンなど
さらに食物繊維は腸内細菌によって分解されることによって「短鎖脂肪酸」という免疫力の向上や肥満症の抑制、糖尿病の予防のために役立つ飽和脂肪酸の一種を生成します。
ちなみにこの短鎖脂肪酸がより生成されやすいのは、水溶性食物繊維だと言われています。
このように、食物繊維は「プレバイオティクス」として、腸内環境や腸内フローラを改善するために必要不可欠な炭水化物だと言えるのです。
ちなみに、食物繊維をほとんど摂らない食生活を送ってしまうと、飢えた腸内細菌が小腸の粘液の炭水化物を食べてしまうといいます。
この粘液はヒト細胞が腸内細菌叢と接触しないようにするための防護壁であるため、もし粘液が減ってしまうと、防御機能が衰えて炎症が起きるとされています。
食物繊維があまり体内に入ってこない時期には、腸内細菌はヒトの小腸の細胞がたえず分泌する粘液の炭水化物を食べて生きる。ご記憶のように、この粘液はヒト細胞が直接マイクロバイオータと接触しないようにはたらく防護壁だ。だから粘液の炭水化物を食べるということは、細菌が腸を守っている粘液層を食べてしまっているわけで、防御機能が衰えて炎症が起きる。小腸の粘液が減ることがヒトの健康にどのような長期的影響を与えるかはまだ知られていないものの、予備的な実験によれば小腸の粘液が失われると大腸炎になる恐れがあると考えられている。
(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p156)
このように腸内の炎症を防ぐためにも、腸内細菌に与える食べ物としての食物繊維を、毎日の食生活において、野菜や果物、豆類や海藻類、きのこ類などからたくさん摂るようにすることは非常に大切なことなのです。
「食物繊維」という言葉は不明確なので、ヒトが体内に取りこむ食物成分のうちマイクロバイオータの食べ物になるものを、私たち二人は「マイクロバイオータが食べる炭水化物」を意味するmicrobiota accessible carbohydrates(MAC)と呼ぶ。すでに述べたように、マックは果物や野菜、豆類、穀物などさまざまな食物にふくまれ、マイクロバイオータによって発酵される炭水化物のことである。食物や食物繊維サプリメントにふくまれる食物繊維には、マイクロバイオータのいる大腸まで到達せず発酵しないものもある。これらの発酵しない繊維質も便秘の改善にはとても効果があり、排泄物が水分を吸って嵩が増すので、良好な整腸作用が得られる。
(ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p157)
もし、毎日の食生活で十分な量の食物繊維をなかなか取れない場合は、水溶性食物繊維のイヌリンや不溶性食物繊維のセルロースなどがサプリメントとして販売されている製品を利用するのも、食物繊維の不足を補うためのひとつの手段です。
また、食物繊維が足りないあなたに【黒糖抹茶青汁寒天ジュレ】 などの青汁も食物繊維不足の解消におすすめです。
そのほか、食物繊維によってダイエットしたり、糖質の吸収をゆるやかにしたい方は、ダイエットファイバーを利用することも、有効な手段です。