日頃の食生活を変えていくことは、腸内フローラの改善に大きく貢献します。
食事や食べ物で腸内フローラを改善するには、腸内に乳酸菌をはじめとした善玉菌(有用菌)を直接送り込む「プロバイオティクス」と、食物繊維やオリゴ糖などの善玉菌のエサになる難消化性の糖類を摂取する「プレバイオティクス」という方法があります(腸内フローラを改善する方法はこちらです)。
そのため、ヨーグルトや納豆や漬物といった日本伝統の発酵食、食物繊維が豊富に含まれた野菜や果物、キノコ類、海藻類といった食べ物を食事から毎日食べるようにすることは、腸内環境・腸内フローラの改善に役立ちます。
それ以外にも、普段行っている食事の細かい部分に気をつけることは腸内フローラの改善につながってきます。
腸内環境を整えるために日頃の食生活で気をつけたいことは、まず、「食べ過ぎ」です。
近年は飽食の時代にあり、本当に空腹でなくても胃の中に食べ物を取り込んでしまう傾向にありますが、食べ過ぎることによって食物を胃液や膵液が分解しきれないと、小腸で栄養素が吸収されず、十分に消化されないまま大腸内に残留物として停滞することになります。
このような消化不良が食事によって起きてしまうと、体内に摂り込まれた炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素は、アンモニアや硫化水素、アミンやインドールなどの毒素や有害物質を発生させ、悪玉菌(有害菌)を増やして腸内の環境を悪化させます。また、このことは大腸がんを発症させる原因にもなるため、非常に大きな問題となっています。
そのため、腸内フローラのバランスを崩すきっかけになる消化不良は、出来る限り避けた方が良いと考えられます。
特に日頃の食事での動物性たんぱく質や砂糖(ショ糖)、酸化した油やトランス脂肪酸などの摂り過ぎは、消化のための酵素を大量消費し、胃腸に大きな負担をかけることになりますので、普段から控えめにしたほうが賢明だと思われます。
また、インスタントラーメンやスナック菓子といった加工食品に大量に含まれている食品添加物も、消化しにくいうえ、腸内フローラのバランスを崩す原因になると言われています。
したがって、食事をする際に消化不良を起こすほどの過食を避け、代わりに少食を心がけることは、腸内環境を整えるのに有効です。
しかし、少食を心がけるといっても、極端な食事制限を行うことは腸にとってはそれほど有益ではありません。
例えば近年はダイエットなどの目的で炭水化物を避ける糖質制限が流行っていますが、炭水化物のなかでも食物繊維やオリゴ糖などの多糖類は消化されにくい性質があり、適量が大腸内に止まると、善玉菌のエサになります。
さらにそれによって、「発酵」という免疫力の向上に寄与する「短鎖脂肪酸」などが作り出される現象も起こってくるため、炭水化物の多糖類を適量摂ることは腸内環境の改善に必要になってきます。
ちなみに、腸内細菌学の第一人者として知られている東京大学名誉教授の光岡知足氏は『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』のなかで、「腸内フローラを改善する食事の摂り方のポイント」として以下を挙げていますので、参考にしてみてください。
(光岡知足『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』p139~140)
以上が、光岡知足氏による食事の摂り方のポイントです。
ちなみに、食事によって腸内環境を改善してくことは非常に重要ですが、自分にとってストレスになるほどの食事制限は、腸内フローラのバランスを崩すきっかけになりますので、たとえば少食を心がけるといっても無理な食事制限をすることは避け、普段から食事を楽しみ、自分の出来る範囲で腹八分を目指すといった、気持ちの良い腸内環境の改善を行うことも大切です。
参考文献
上野川修一 『からだの中の外界 腸のふしぎ』 講談社
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
新谷弘実 『健康の結論―「胃腸は語る」ゴールド篇』 弘文堂
新谷弘実 『病気にならない生き方』 サンマーク出版
鶴見隆史 『「酵素」の謎 なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 祥伝社
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
松生恒夫 『腸寿 長寿な腸になる77の習慣』 講談社
福田真嗣 『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ