腸内細菌の集まりである腸内フローラのバランスを改善し、腸内環境を良くするためには、食事以外のことも大切になってきます。腸内フローラ・腸内環境を良くする生活習慣としては以下のことが挙げられます。
腸内フローラ・腸内環境を良くする生活習慣
腸は副交感神経が優位になると、蠕動(ぜんどう)運動が促されるようになりますが、最も蠕動運動が起こりやすいのは、朝食を摂った後だとされています。
なぜなら眠る前の夜の時間帯と起きた後の朝の時間は副交感神経が優位になっているからです。反対に昼から夜にかけての活動の時間は交感神経が優位になっています。朝食後に便意を感じやすいのは、排便のリズムが体内時計にコントロールされているからです。
そのため、生活リズムが不規則で、起床後にきちんと朝食を摂らない生活をしてしまうと、せっかくの排便の機会が失われてしまうことになるため、慢性的な便秘に陥りやすいといわれています。
近年、自動車やパソコンの普及により、移動中も仕事中も座りっぱなしという方が増えていると思われますが、運動不足は腸の働きを停滞させる要因だとされています。またそのことが便秘を引き起こすとも言われています。
さらに運動不足は大腸がんのリスクを高めるということが、世界がん研究基金(WCRF)などの調査で分かっています。適度な運動は確実に大腸がんのリスクを低下させますので、大腸がんを予防するためにも日頃からなるべく身体を動かすようにすることが大切です。
からだの冷えは腸の働きを低下させるだけではなく、免疫力の低下にもつながります。また猛暑の日に冷房が効いた室内と外を行き来するなど、寒暖の差が激しい場合には特にからだは冷えやすく、腸の運動を低下させやすいと言います。
医学博士の松生恒夫氏はこのことを「気温差一〇℃の法則」と呼び、「寒暖の変化は、ある意味で身体的ストレスであり、体や腸を冷やすことで、停滞便や便秘を引き起こすことにつながる」としています。
したがって入浴の際にゆっくりと湯船につかったり、生姜(しょうが)などが入った温かい飲みものを飲んだり、冬場は腹巻を身につけたりして、日頃から体を温めるようにすることが重要です。
腸は「腸神経叢」と「自律神経(交感神経・副交感神経)」という腸自体に存在する二つの神経によってコントロールされていますが、過度のストレスは自律神経の交感神経を優位にしてしまいます。
一般的に活動を行っている時は交感神経が優位になるとされていますが、腸に関しては車のアクセルの働きをするのは副交感神経であり、交感神経は腸の運動のブレーキ役を果たしています。
そのため、長期間激しいストレスにさらされ続けることで、自律神経の働きが交感神経に傾いてばかりいると、腸の働きが抑えられ、便秘の原因になってしまうことがあります。また、その状態に不安などの心の問題も加わってくると「過敏性腸症候群」にかかってしまうリスクも生じてきます。
したがって、普段からリラックスを心がけたり、時々、気晴らしのために思いっきり気分転換をすることも腸内環境を良くするためには必要です。
近年、糖質制限ダイエットやグリーンスムージーダイエット、断食ダイエットなど、様々な痩せるための方法がマスメディアを通じて宣伝され流行するようになりましたが、どのような方法であれ、からだに無理をさせる極端なダイエットは腸内環境を悪化させてしまいます。
普段から少食を心がけたり、砂糖が多く含まれた甘い物を控えたりすることは、確かにダイエットにつながりますが、痩せたいという思いが強すぎるあまり、からだが必要としている栄養素を摂らなくなってしまうと、体調を崩してしまいますし、特に食物繊維が不足した場合は腸内環境も悪化させてしまいます。
そのため、ダイエットをする際は、あまり無理をせず、からだや腸が発する声を聴くようにすることも大切です。
なお、腸内環境を良くするための具体的な方法や食事、栄養素などについては「腸内フローラを改善する方法」や「腸内環境を改善する食事・栄養素」のページをご覧ください)。
また、腸内フローラを悪化させる原因についてはこちらのページをご参照ください。
参考文献
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
新谷弘実 『病気にならない生き方』 サンマーク出版
新谷弘実 『病気にならない生き方2 実践編』 サンマーク出版
新谷弘実 『健康の結論 「胃腸は語る」ゴールド篇』 弘文堂
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
松生恒夫 『腸寿 長寿な腸になる77の習慣』 講談社