ここでは食物繊維と腸内環境の関係について述べています。
近年、毎日の食事をスーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売されている加工食品やファストフードで済ます方が増えてきているかもしれませんが、野菜や果物、海藻類などをほとんど口にせずに加工食品ばかりを食べていると、深刻な問題が生じてきます。
それは食物繊維の不足による腸内環境の悪化です。
第6の栄養素ともいわれる「食物繊維」はヒトの酵素では消化できないため、小腸で吸収されずに大腸に送られるのですが、大腸に送られた食物繊維は腸内細菌のエサになったり、腸内の有害物質を吸着し、便のかさを増やして体外に排出したりします。
つまり、食物繊維は腸内細菌のバランスを整えたり、デトックス(毒出し)したりしてくれるのです。そういうわけで、食物繊維が不足してしまうと、反対に便秘や大腸がんなどの原因にもなります。
さらに、認知症の方の多くは、便秘気味だといわれているので、近年増え続けている認知症をはじめとした生活習慣病を予防するには、脳だけではなく、腸に注目し、食物繊維が豊富な食事によって腸内環境を整えることが大切になってくると考えられるのです。
また、食物繊維の不足によって腸内環境が悪化してしまうと、細胞に栄養素を運ぶ血液が汚れてしまうため、結果的に細胞も汚れてしまいます。このあたりのことはアトピー性皮膚炎の発症にも関係してくるので、アトピーに悩まされている方は、食物繊維を多く摂ることによって腸内環境を整えることが重要です。
ちなみに食物繊維には、水に溶けにくい不溶性の食物繊維と、水に溶けやすい水溶性の食物繊維があります。
不溶性の食物繊維は、主に腸内環境をきれいにするデトックスや便通の促進に役立ってきます。
一方、水溶性の食物繊維は、腸内細菌のエサになりやすいため、腸内細菌の集まりである腸内フローラのバランスを整えて改善したり、悪玉菌の抑制やダイエット効果が期待できる短鎖脂肪酸の生成に役立ちます。
なお、日本における酵素栄養学の第一人者である鶴見隆史氏は、食物繊維の効果効能について、『食物養生大全』のなかで以下を挙げています。
〇便の構成要素となり便量を増大し便秘を防ぐ
〇発がん物質や有害菌、有害物質を吸着し体外に排泄する
〇消化管の働きを活発にする
〇糖の吸収速度を遅くし食後の急激な血糖値上昇を防ぐ
〇唾液分泌を増す(咀嚼が多い場合)
〇胆汁酸を吸着し体外に排泄する
〇コレステロールの余分な吸収を防ぐ
〇ナトリウムの過剰を防ぐ
〇腸内での有用菌(善玉菌)のエサとなり有用菌を増やし腸内環境を改善する
〇胃袋がいっぱいになり過食しにくくなり、そのためカロリー制限できる
〇粘性の食物繊維ほど小腸に分泌される膵液と胆汁の液や酵素の量を多くする
〇腸の蠕動運動を活発にし、内容物を速やかに移動させる
〇水溶性食物繊維は短鎖脂肪酸をつくり、これがありとあらゆる作用をする
(鶴見隆史『食物養生大全』評言社 p420~421)