腸内フローラは理想的なバランスを保つことが健康維持のためには非常に重要です。
腸内フローラの構成は、幼少期の生育環境や土地柄でほとんど決まってしまい、成人になると腸内細菌の構成はあまり変化しないと言われていますが、普段の食生活や加齢などは、腸内フローラの構成を変える大きな要因になります。
例えば、腸内細菌のうちの善玉菌を増やす働きがある乳酸菌や食物繊維、オリゴ糖などを食事のなかでほとんど摂らなかったり、食べ過ぎによる消化不良などを起こしてばかりの食生活を送ったりしていれば、悪玉菌が増殖し、腸内環境の腐敗は促されていきます。
また、老年期にさしかかると、善玉菌であるビフィズス菌の数は次第に減っていき、代わりに大腸菌や乳酸桿菌、ウェルシュ菌の数が増していくと言われています。
そのため、条件によって比率が変わってくる腸内細菌のバランスを正常に保つことが、腸内環境・腸内フローラの改善を意味することになります。
腸内細菌の理想的なバランスは一般的には「3:1:6」が良いとされていますが、ビフィズス菌をはじめとした腸内細菌の研究に長年のあいだ携わってきた、東京大学名誉教授の光岡知足氏は、善玉菌と悪玉菌、それに日和見菌のバランスは「2:1:7」が理想だとしています。
この「2:1:7」という腸内細菌のバランスは、ただ単に悪玉菌を排除して善玉菌ばかりを増やしても、健康になれるわけではないということを示唆しています。そして光岡知足氏は長年にわたる腸内フローラの研究の結論として、このように述べています。
人間社会に照らし合わせればわかりますが、すべての人が熱心に働いているような組織というのはどこか窮屈で、気詰まりがしています。ヒトも生物の一員ですから、なかには怠け者もいますが、そうした人が排除されてしまうような環境はけっして健康的とは言えないでしょう。
(中略)
どの国、どの時代であっても、悪いことをする人は必ず存在しますが、善いことをする人の割合が一定以上の割合で存在していれば、そうした悪も自然と抑え込まれ、社会の調和は保たれるでしょう。
すべてを変える必要はないのです。腸内細菌で言えば、ヒトの健康のカギを握るのはビフィズス菌ですから、ビフィズス菌が働きやすい環境を整えていくことを常に考えるようにすれば、悪玉菌の増殖は抑えられ、大多数の日和見菌が悪になびくことがなくなっていきます。
そう、わずか2割が変わるだけで腸内フローラのバランスは回復し、私たちは心身の健康を確保することができるのです。
(光岡知足『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』)
つまり、腸内細菌のバランスも人間社会も、共生することが大切であり、その理想は「2:1:7」なのだということです。
また、腸内においては善玉菌でも悪玉菌もない「日和見菌」が多数を占めていることの意味も忘れてはなりません。
さらに腸内細菌の集まりである腸内フローラに関しては「多様性」を意識することも非常に大切になってきます。