『「腸の力」であなたは変わる』 デイビッド・パールマター クリスティン・ロバーグ 著 白澤卓二 訳 三笠書房 2016年
『「いつものパン」があなたを殺す』の著者でもあるデイビッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ氏による『「腸の力」であなたは変わる』は、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善していくことが様々な現代病を予防したり、症状を緩和したりすることにつながるという可能性を示唆してくれます。
デイビッド・パールマター氏は『「腸の力」であなたは変わる』のなかでマイクロバイオームの健康の重要性について言及しています。
今、あなたの体には、自分自身の細胞数の十倍もの大量の数の生物が住みついている(略)。
これら約百兆の目に見えない生物、すなわち細菌は、体の内側も外側も、口や鼻、耳、腸、性器の他、皮膚のすみずみまでおおいつくしている。細菌をすべて体から引き離せとしたら、二リットルほどの容器を満たすほどだ。
こうした細菌は大半が消化管を住みかとし、人間の健康のおよそあらゆる面を支配し、支えていると考えられる。そして人間の体はこれらの細菌だけでなく、その遺伝物質とも相互に作用しているのだ。
この複雑な体内環境を、「マイクロバイオーム」と呼ぶ。「マイクロ」は微細な、「バイオーム」は大きな住みかという意味だ。
(『「腸の力」であなたは変わる』 p16)
私たちの腸に住む細菌は免疫機能、解毒、炎症、栄養の吸収、炭水化物や脂肪をどのように利用するかなど、さまざまな生理行動に作用している。これらすべてのプロセスは、アレルギー、ぜん息、ADHD、がん、糖尿病、認知症などにも強く影響する。
マイクロバイオームは気分や性欲、代謝、免疫、さらには認知力や意識の明瞭さにまで影響する。また、太っているか、やせているか、精力的か無気力かを決めるのにもひと役買う。 簡単にいえば、感情的にも身体的にも、われわれの健康に関することはすべてマイクロバイオームの状態で決まるということだ。
そしておそらく、体の他のどの部分よりも、脳ほど腸内細菌の変化に敏感なものはないだろう。
( 『「腸の力」であなたは変わる』 p17~18)
また「健康なマイクロバイオームをつくるために、簡単な食事の見直しと、ときにはより積極的な技術を利用し」、「症状を劇的に変化させてきた」と述べています。その症状とは以下の通りです。
( 『「腸の力」であなたは変わる』 p35~36)
では、デイビッド・パールマター氏はなぜこれほど多くの病気や症状を改善に向かわせることが出来たのでしょうか?
その理由はこれらの病気や症状の原因の多くが腸内フローラと関係しているからだと考えられます。
デイビッド・パールマター氏は本書『「腸の力」であなたは変わる』の中で、その腸内フローラの働きの詳細を挙げています。
( 『「腸の力」であなたは変わる』 p35~36)
この腸内フローラを悪化させてしまう要因としては、「グルテン」や「砂糖」の過剰摂取や「抗生物質」の乱用、「ストレス」などを挙げていますが、これらがなぜ問題なのかと言えば、体内において「炎症」を引き起こしてしまうからだとしています。
炎症とは体の回復反応の重要なはたらきで、免疫活動を傷口や感染箇所に集めるためのものだ。
だが炎症が長引き、体内に深く残れば病気を発症する。実際にそれは、肥満、糖尿病、がん、うつ病、自閉症、ぜん息、関節炎、冠動脈疾患、多発性硬化症、さらにはパーキンソン病、アルツハイマー病などさまざまな症状に見られる。
( 『「腸の力」であなたは変わる』 p68)
また、この炎症は細胞内のミトコンドリアにも悪影響を与えると言います。
さらに本来腸から入り込まないものが体内に入り込んでしまうようになることで、アレルギーとも関係してくる「リーキー・ガット(腸管の漏れ)」も免疫反応と炎症を過剰に活発にする原因だとしています。
では、腸内フローラの悪化や、そのことによる体内の炎症を防いでいくためには、どうすれば良いのでしょうか?
デイビッド・パールマター氏は腸内フローラの悪化や健康が損なわれたマイクロバイオームに対して、悲観的な見方はしていません。
例え善玉菌が少なく、悪玉菌が優勢であるといったように、腸内フローラの状態が悪くても、「 プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」といった食品を利用した腸内フローラ改善方法や、「発酵食品」、「低炭水化物」、「グルテンフリー」、「体にいい脂肪」、「サプリメント」など、食事によって腸内環境を変えることは可能だとしているのです。
マイクロバイオームは私たちの環境に応じて絶えず変化していく。
呼吸する空気、触れる相手、服用する薬、接触する汚れや細菌、摂取する食物、さらには思考にまで応じて変化する。
自然分娩で生まれ、六ヵ月以上、母乳を与えられて育ったとしても、現在マイクロバイオームが健康だということではない。
同様に、帝王切開で生まれ、人工栄養で育っても、健康管理を続け、イキイキと人生を謳歌している人もいる。どちらもありえるのだ。
( 『「腸の力」であなたは変わる』 p306)
本書のなかでも触れていましたが、デイビッド・パールマター氏のこのような未来に対する肯定的な考え方は、ヒトの生は遺伝子によって予め決められているわけではないという「エピジェネティクス」にも通じるように思われます。
第1部 一生の健康を約束する、「腸内フローラ」を育てなさい(人は誕生から死まで「細菌」とともに生きている/ 恐るべき「炎症」―全身が燃えている/ なぜ腸が荒れると、心も不安定になるのか/ 腸内フローラと食欲、肥満、そして脳の驚くべき関係/ 自閉症も腸に左右されているのか)/
第2部 腸内の細菌たちにトラブルを起こさないために(果糖・グルテン―あなたの健康を破壊する「2つの悪魔」/ 医薬品・農薬・水道水…―これだけある「腸に有毒かもしれないもの」)
第3部 腸から脳をもっと元気にする「実践プログラム」(気持ちのいい腸内環境をつくる「6つの食べ物・食べ方」/ 人生最高の頭と体をつくる「サプリメント&7日間メニュー」)