ここでは『マイクロバイオームの世界 あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』(ロブ・デサール , スーザン・L. パーキンズ 著 斉藤隆央 訳)を、腸をより深く知るための書籍として紹介しています。
ロブ・デサール , スーザン・L. パーキンズ氏らによる『マイクロバイオームの世界 あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』は、わたしたちの周りに存在してる微生物の世界を詳しく簡潔に知ると同時に、生命とはどのような存在か? ということを考えるために最適な一冊であるといえます。
しかし専門用語が多く、第1章「生命とは何か?」、第2章「マイクロバイオームとは何か?」では、古細菌やウイルス、生命の根幹ともいえる遺伝子の話題が中心となってくるので、遺伝子の基礎知識がある程度ないと、読んでいて難しく感じるかもしれません。そのため、微生物に関する基礎知識を学びたいという方は、最初に別府輝彦氏による『見えない巨人―微生物』を読んだ方が良いかもしれません。
ですが、第3章からは私たちの皮膚や口腔、胃腸、(女性であれば)膣、へそなど、人体の様々な部位に生息している微生物のことが話題になり、読み進めていくと、見えない存在である「マイクロバイオームの世界」が私たちの免疫や健康全般に深く関わっていることを知らされます。
そしてそれと同時に、その「マイクロバイオーム」の研究は始まったばかりであり、「マイクロバイオーム」を健康目的のために人間の手によって操作するのは、容易ではないということを痛感させられます。
ちなみに「マイクロバイオーム」とは、「私たちの体の内部や表面のほか、家庭や学校などの生活の場のそれぞれに存在する微生物の集まり」のことを意味します。
この「マイクロバイオーム」という言葉は海外では一般概念として使われていますが、日本では腸内細菌叢のことを「腸内フローラ」と呼んでいることもあり、日本ではまだまだ浸透していないかもしれませんが、腸だけではなく、体の様々な部位に存在している微生物の存在が、私たちの心の領域にも関係し、気持ちなどにも影響を与えていることが明らかになってきている現在、次第に日本でも腸内細菌叢だけではなく、マイクロバイオームにも関心が持たれるようになってくると思われます。
そして、これからの時代は、微生物を病気をもたらす「敵」と見なして抗菌グッズを買い漁るのではなく、人類を存続させるために有益であると同時に、微生物の存在によって私たちは生かされているという事実にも目を向け、それぞれが微生物の集まりとどうのように向き合っていくのかが、問われるのだと感じます。
(略)科学者や医療の専門家だけが、微生物の世界の生態的な驚異についてもっとよく知る必要があるのではない。ヒトならだれでもそうだ。私たちが日々出くわしている微生物の大半は体に有益であり、その事実を無視したり見落としたりすると――あるいは現代の世界に遍在するようになった抗生物質や抗菌化合物の影響を見誤ると――私たち個人の健康や種全体の健康をひどく害するおそれがあるのだから。(ロブ・デサール , スーザン・L. パーキンズ『マイクロバイオームの世界』斉藤隆央 訳 p261)
なお、腸に生息する腸内細菌の多様な集まりである「腸内フローラ」が、免疫や健康とどのように関わっているのかを知りたい方は、第5章「私たちを守っているものは何か?」、第6章「「健康」とは何か?」に詳しく書かれていますので、第5章から読んでみるのも良いかもしれません。
第1章 生命とは何か?
第2章 マイクロバイオームとは何か?
第3章 私たちの体表やまわりに何がいるか?
第4章 私たちの体内に何がいるか?
第5章 私たちを守っているものは何か?
第6章 「健康」とは何か?