ここでは腸内フローラの改善方法を紹介しています。
腸内フローラの改善するには、納豆や味噌などの日本人が昔から食べてきた発酵食品や、食物繊維が多く含まれた野菜や果物などを中心にした食生活を送ることが効果的です。
また、腸内で有用な働きをする菌が含まれた「プロバイオティクス」や、腸内細菌のエサになる「プレバイオティクス」、さらに腸内で良い働きをする成分が含まれた「バイオジェニックス」と呼ばれる食品などを日頃から摂るようにすることで、お花畑や植物を育てるのと同じように、腸内細菌を育てていくこともオススメです。
ちなみに、腸内フローラの改善を成功させる秘訣は途中でやめず未来のために継続していくことです。
普段、私たちの腸内に棲みついている腸内細菌は、人間の共生者として、「腸内フローラ」(腸内細菌叢)を形成し、日々からだの健康を保つ役割を果たしてくれています。
もし、腸内細菌の集団である腸内フローラのバランスが崩れてしまうと、腸をはじめとする免疫系の機能が弱まるため、免疫力がひどく低下します。
また、神経系、ホルモン系などの働きも不十分になるため、感染症やアレルギー、自己免疫疾患、がんなど、様々な病気を発症するリスクが高まってしまいます。
腸内細菌のバランスが崩れる原因としては、食生活の乱れや、過度のストレス、加齢、運動不足などが挙げられます。特に加齢に関しては、老年期に差しかかると、善玉菌のビフィズス菌は減り、代わりにウェルシュ菌などの悪玉菌の割合が増加していきます。
そのため、腸内細菌のバランスが正常になるよう腸内環境を整えるには、まず第一に、栄養バランスが偏った食事を避けたり、たくさん笑うようにするなど、日々リラックスを心がけたりすることが大切です。
またウォーキングやジョギングなどの適度な運動を行うことも必要です。
さらに、腸内フローラの改善を行う際には、腸内細菌の多様性を重視し、腸内フローラのバランス全体を整えるよう意識することが重要になってきます。
免疫系・神経系・ホルモン系は相互に影響し合っている。
また、食生活による腸内フローラを改善する方法として、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」があります。
「プロバイオティクス」とは、腸内で健康上有益な働きをする菌が含まれた食品(プロバイオティクス)を腸内に送り込む方法のことです。
厳密には「プロバイオティクス」とは、生きたまま腸にたどりつき、そこで産生する乳酸などの代謝産物が、ヒトのカラダに有益な健康効果をもたらしてくれる微生物のことですが、例えば、活きた乳酸菌が届くようにヨーグルトを食べたり、納豆や漬物などの日本古来の発酵食を摂ったりすることは、方法としての「プロバイオティクス」にあたります。
体外からの乳酸菌やビフィズス菌は、成人になると腸内に定着させるのは難しいですが、乳酸菌やビフィズス菌を摂取すると、3~7日は乳酸や酢酸をせっせと作ってくれるため、腸内環境を酸性に保ってくれるとされています。
さらに、乳酸菌が胃酸によって死菌となってしまった場合でも、乳酸菌などの善玉菌が作った溶液は、腸に届けば善玉菌のエサになり、腸内環境を整えるのに役立ってくれます。
それに加えて、この「プロバイオティクス」には、善玉菌(有益菌)が腸内に増えることによる病気発症のリスク低減効果があると言われています。具体的には、炎症性腸疾患の抑制作用、抗感染作用、免疫調節作用、抗アレルギー作用、抗がん作用などです。
一方、「プレバイオティクス」とは、腸内細菌のエサとなる「難消化性の食品成分」が含まれた食品(プレバイオティクス)を体内に摂り入れ、善玉菌(有益菌)を増やす方法です。
「難消化性の食品成分」とは、食物繊維やオリゴ糖など、主に小腸では十分消化されない性質をもつ糖質のことで、小腸で吸収されずに大腸内において腸内細菌のエサになるもののことを指します。
特に腸内環境を良くするために食物繊維は大切ですが、この「プレバイオティクス」を行うことによって、大腸の健康促進や感染防御、粘膜免疫の増強、カルシウムやマグネシウムのようなミネラルの吸収促進などの効果が期待出来ると言われています。
ちなみに食物繊維やオリゴ糖は、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる、腸管のエネルギー源になるなど、腸内で重要な働きをしてくれる飽和脂肪酸の一種を生み出すための材料になります。
さらに、腸内フローラを改善する方法としての「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を行うことで、ビフィドバクテリウムやラクトバチルスといった善玉菌(有益菌)の菌数が増加し、大腸菌やクロストリジウムなどの悪玉菌(有害菌)の増殖は抑えられます。
そのため、アンモニアやアミン、インドール、硫化水素などの毒素や有害物質が腸内環境を悪化させ、からだに悪影響を与えるのを未然に防ぐことが可能になります。
それに加え、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」で腸内に善玉菌が増えると、腸内環境が改善されるため、腸の蠕動運動が促され、さらに感染症に対しても抵抗力が高まるので、便秘や下痢といった症状も緩和されていきます。
また、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」によって腸内フローラの改善を行うことは、腸管のバリア機能を回復することにもつながっていきます。
ちなみに、この二つの腸内フローラを改善する方法は、どちらか一方ではなく同時に行うことが可能です。「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」の両方を併行して行うようにすることは、腸内フローラの改善に非常に効果的です。
ちなみにこの腸内フローラ改善方法は「シンバイオティクス」と呼ばれています。
そのほか、従来の「プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」を幅広い視点で捉え直し、腸内フローラを改善する働きがあるにも関わらず、その両方からこぼれ落ちてしまっていた有効成分や乳酸菌生産物質や乳酸菌生成エキスなどを積極的に評価していくという「バイオジェニックス」という方法もあります。
このように、腸内フローラの改善方法は基本的に乳酸菌や食物繊維、オリゴ糖などを食事から摂っていくことが大切なのですが、乳酸菌生産物質や乳酸菌生成エキスなどが含まれたサプリメントを利用することで、不足しがちな栄養成分をバランスよく補うことも、腸内細菌のバランスを整え、腸内環境を改善するためには非常に有効なのです。
しかし「プロバイオティクス」であれ「プレバイオティクス」であれ、腸内環境を改善するための習慣を途中で止めてしまうと、腸内フローラは元に戻ってしまいやすいのです。
そのため、腸内フローラを改善するために「プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」と呼ばれる食品を利用する場合は、必ず継続することが非常に重要になってきます。
したがって、腸内フローラを改善するための秘訣とは、自分の腸内に棲む善玉菌を育てるようなつもりで、毎日、腸内細菌が喜ぶ食べ物や栄養成分を腸に届けてあげることなのです。
また、腸内フローラの改善で肝心なのは、腸内細菌と共に生きるつもりで、腸内細菌のお花畑(フローラ)を咲かすように、未来に向けて腸内環境の改善を続けていくことなのです。
そのため、腸内フローラの改善を始めてみて1~2週間経っても、何の健康効果も感じられないからといって、すぐにやめてしまわないことが大切になってきます。
腸内フローラの改善は、正しい方法で続ければ続けるほど、その効果が確実に現れてくるようになります。
もちろん、強いストレスなどによって腸内環境が悪化する場合もありますが、腸内フローラを改善する習慣を、途中であきらめることなく続けていけば、免疫力は向上し、病気になりにくい、いきいきとした心身ともに健康な生活を送ることが出来るようになるのです。
参考文献
上野川修一 『からだの中の外界 腸のふしぎ』 講談社
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
新谷弘実 『病気にならない生き方』 サンマーク出版
新谷弘実 『健康の結論 「胃腸は語る」ゴールド篇』 弘文堂
松生恒夫 『腸に悪い14の習慣 「これ」をやめれば腸が若返る』 PHP研究所
辨野義己 『腸を整えれば病気にならない 腸内フローラで健康寿命が延びる』 廣済堂出版
鶴見隆史 『「酵素」の謎 なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 祥伝社
藤田紘一郎 『人の命は腸が9割 大切な腸を病気から守る30の方法』 ワニブックス
藤田紘一郎 『脳はバカ、腸はかしこい』 三五館
藤田紘一郎 『アレルギーの9割は腸で治る! クスリに頼らない免疫力のつくり方』 大和書房
内藤裕二 『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』 ダイヤモンド社
福田真嗣 『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ
デイヴィッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「腸の力」であなたは変わる』 三笠書房
ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 早川書房