ここでは短鎖脂肪酸のリーキーガット症候群を改善する効果について述べています。
短鎖脂肪酸とは、主に食物繊維や難消化性の糖質の発酵で生じてくる、炭素の数が7個以下の脂質のことで、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」「乳酸」などの総称のことですが、このうちの特に酪酸は、リーキーガット症候群の改善に役立つようです。
この「リーキー・ガット症候群」(腸管壁浸漏症候群)とは、「腸もれ」とも呼ばれており、十分に分解されていないために本来は大きすぎて小腸の腸絨毛で吸収されないはずの栄養素の分子が、血液中に取り込まれてしまうというものです。
そしてこのリーキーガット症候群はアレルギー症状の原因になることが、近年、指摘されるようになっています。
しかし短鎖脂肪酸のうちの「酪酸」には、腸壁に出来たすき間をふさぐ働きがあるとされています。
では短鎖脂肪酸のうちの酪酸によってリーキーガット症候群を改善していくためには、どうすれば良いのでしょうか?
このことに関しては、普段から食物繊維やオリゴ糖を多く摂ることが基本になってきます。なぜなら短鎖脂肪酸は、腸内フローラを形成する腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖に対して発酵を起こすことで生成されるからです。
特にアッカーマンシアと呼ばれる菌は、腸壁の粘膜層を厚くするように働くとされていますが、このアッカーマンシアは、食物繊維やオリゴ糖によって増殖するといいます。
したがって、短鎖脂肪酸によってリーキーガット症候群を改善するには、食物繊維を積極的に摂っていく必要がありますが、普段から肉食や加工食品が中心で、あまり食物繊維を摂っていないという方は、いきなり大量の食物繊維を摂ったとしても、腸に生息している腸内細菌が対応できないため、少しずつ摂取量を増やしていく必要があります。
腸の細胞を結合させている蛋白質の鎖は、人体のあらゆる作用を担っている蛋白質がそうであるように、遺伝子の指示でつくられる。だが、ヒトはそうした遺伝子のコントロール権の一部を微生物に譲渡してしまった。腸壁の蛋白質の鎖をつくる遺伝子の発現量を決めているのは微生物だ。酪酸はそのメッセージを伝える。微生物が酪酸を多く出せば出すほど、ヒトの遺伝子は多くの蛋白質の鎖をつくり、腸壁は堅固になる。
(『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』(アランナ・コリン 著 矢野真千子 訳 p220)